「マットレスって、どれも一緒じゃないの?」
そう感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。見た目は同じように見えても、内部構造も寝心地も全然違うのがマットレス。
一目見ただけでは分かりにくい、マットレスの内側と寝心地からみた、マットレスの選び方をご紹介します。
初めてマットレスを購入される方やマットレスの買い替えを検討されている方は、ぜひご参考になさってください。
マットレス内部は、主に下記のような3つのパーツに大きく分けられます。
? 肌に当たるキルト層
? クッション層
? スプリング(ばね)層
ブランドやメーカー、機能によって多少の差はありますが、おおかた、この断面図のような構成で層が積み重なって、1つのマットレスが作られています。
クッション層の上に並ぶ、肌に接する層です。肌に直接触れる層なので、やわらかく繊細な生地が使われています。
伸びやかなニット生地や、光沢のあるシルクなど、素材はさまざまですが、多くの場合は、汗や湿気を逃がすため、通気性の高いものが使われていることがほとんどです。
後述のコイルの上に敷かれている層で、コイルが弾力担当なら、クッションは保温性や吸湿を担当する部分です。
鋼でできたコイルだけのマットレスだと、寝た時に体にコイルが当たり、痛くなってしまいます。そこにクッション材を敷くことによって、寝心地や保温性を保ち、吸湿・湿気の発散ができるようになっています。
スプリングコイル(ばね)が並ぶ層で、スプリング層が有ることで寝転んだ時に弾力が感じられます。
スプリングコイルの並び方や種類によって寝心地が変わる、マットレスの内部構造の中でも大変重要な層といえます。
マットレスを構成する層についてご説明しましたが、寝る面だけでなく、側面にも大事な機能が付いています。
マットレスの側面にボタンのような、ちょっとした穴が空いています。
マットレス本体の大きさと比較するとかなり小さな穴なのですが、実は大事な役割を担っているのです。
こちらは、マットレス内の湿度や温度を一定にキープするために必要な「ベンチレーター」と呼ばれているパーツです。
私たちは寝ている間に何リットルもの汗をかいており、その汗はマットレス内に吸収されています。
その汗から出た湿気がマットレス内部に停滞してしまうと、ダニなどの害虫が発生したり、カビが生えやすくなってしまう…など、マットレス全体にダメージが広がってしまいます。
このベンチレーターは、寝返りを打った時に、マットレス内の空気と外の空気を入れ替えてくれます。
高温多湿な気候の日本でマットレスを使うためには不可欠な機能です。
ベンチレーターがないマットレスもありますが、この場合は他の機能で通気性が確保されていることがほとんどなので、気になる方はお店のスタッフに確認してみましょう。
また、通気性が気になる方やマットレス内の湿気が気になる方は、定期的に日当たりのよいところでマットレスを干すのもおすすめです。
ボンネルコイルは、渦巻き状になった鋼のコイルを縦方向・横方向に連結させたもので、一番普及度が高いスプリングコイルです。
ほどよい固さが特徴で、体を面で支える構造になっています。
コイルが全て連結されているボンネルコイルに対し、ポケットコイルは1つ1つのコイルが不織布でラッピングされているのが特徴です。
連結されたボンネルコイルが面で体を支えてくれるのに対して、ポケットコイルは点で体を支える構造になっています。
また、並び方も特徴的で、主に
? 並行配列
? 交互配列
の2種類があります。
並行配列は、交互配列よりコイル数が相対的に少なくコイルの間隔も広くなるため、柔らかな寝心地になります。一方の交互配列は、コイルの隙間を詰めるように並べるのでコイル数も多めで、横揺れしにくくしっかりした寝心地になります。
同じコイルの並べ方を変えるだけで寝心地が異なるのは興味深いですね。
コイルについてご紹介してきましたが、マットレスの中にはコイルがないマットレスも多く普及しています。
金属部分がなく、処分の際も環境負荷が少なく人気を集めています。
コイルスプリング仕様のマットレスに比べ、カッティングなどの加工もしやすいため、形も豊富で、選択肢が多い点が大きなメリットです。
代表的なものをご紹介します。
ヤシの木の繊維を使った、高反発・高密度マットレスです。
お布団や体操マットのような寝心地が特徴で、硬い寝心地を好む方に人気です。
硬めの寝心地が楽しめる高反発フォームマットレスや、軽く沈み込むような寝心地が人気の低反発フォームマットレス、ゴムを使用した弾力が楽しめるラテックスフォームマットレスなどが人気です。
病院や車いすなどにも使われている素材が多く、体に痛みがある方や寝ただけでは疲れが取れにくい…という方を中心に人気です。
空気を入れて使用するマットレスです。
空気を出し入れすることによって畳んで保管できるため、簡易ベッドとして使う方や、キャンプなどで使用する方も多いようです。
「空気を出し入れするなんて面倒!」と感じる方もいらっしゃるようですが、最近はコンセント付きの電動エアーマットレスも多く、ダイヤルを回すだけで空気の出し入れや調整が自動でできるものや、電動ポンプ式のものがメジャーです。
水を入れて使うベッドで、冬は暖かく、夏はひんやりと冷たい使用感が特徴です。他のマットレスに比べかなり高価にはなってしまうのですが、水でできていることから、どのような体型の方にもぴったりとフィットしやすいメリットがあります。
衝撃を分散させることに長けた素材で、ほとんどのマットレスに入っているほか、ウレタンフォーム単体のフォームマットレスも人気の素材です。
価格が高いものになると、低反発などの高級素材が使われていることも多いです。
ウレタン近くの層に使用されていることが多いです。
ボリュームを出すために使われる通常の綿に加え、さらにマットレス内部のバクテリアやにおい、ダニなどをブロックする抗菌綿や防臭綿、防ダニ綿もプラスされた高機能マットレスも増えてきているようです。
表面の生地の真下や、コイルの上下など、それぞれの素材の仕切り役として使われていることが多い生地です。
こちらも、不織布と同じく、詰め物の間に入っている素材です。
手芸用で使用するフェルトよりも厚めで、コイルの上下に必ず使用されている緩衝材のような存在です。
お店では展示マットレスの横にミニチュアの断面図などが用意されているところも多いので、見かけた際にぜひチェックしてみてくださいね。
ボンネルコイルスプリング | ポケットコイルスプリング | |
---|---|---|
耐久性 | 圧力が分散されるため、コイルそのものの耐久性は高い | 圧力がかかりやすいポイントはコイルに負荷がががるため、耐久性はやや低くなる |
通気性 | コイルが露出しているため、マットレス内に湿気がこもりにくい | コイルがそれぞれ不織布の袋に包まれているため、通気性は低めだが、ベンチレーターで湿気対策が可能 |
柔軟性 | ポケットコイルと比較すると低め。柔軟性よりは弾力性の方が高い | 体のラインにフィットさせやすく、やわらかな寝心地が楽しめる |
耐圧分散性 | ポケットコイルと比較すると低め | 体の重みを点で支えてくれるため、体圧分散に優れている |
横揺れ | コイルが連結されているため、隣で寝ている人の寝返りが響きやすい | 全コイルが独立しているため、隣で寝ている人の寝返りが響きにくい |
お布団に近い硬めの寝心地で、初心者の方にも親しまれやすい寝心地です。
通気性に優れているため、汗によるマットレス内の湿気を撃退しやすく、いつまでも快適にご使用いただけます。
体重が重いと、ポケットコイルのマットレスだと沈み込みが大きく、腰痛など体を痛めてしまうこともありますが、面で支えてくれるため、体の負担が少なくなります。
点で支えられているため、外からの衝撃も分散されやすくなります。
他の人の寝返りが気になりにくいというメリットも得られます。
体圧が分散されやすいため、腰や肩など、疲れを感じやすい体のパーツへの負担が軽減されやすくなります。
コイルがそれぞれ独立しているため、やわらかい寝心地が楽しめます。
スプリングにも、
- ソフト
- レギュラー
- ハード
と、3種類の硬さがあります。
こちらは体重別で硬さを選ぶと良いでしょう。
体重が軽い女性・お子様 | 平均体重・無難なマットレスを希望の方 | 体重重ための男性 | |
---|---|---|---|
おすすめの硬さ | ソフト | レギュラー | ハード |
解説 | あまり体重が軽い方は、体の沈み込みがあまり感じられず、他の硬さだと体の負担を感じやすいです。なるべく、やわらかめのコイルを選ぶことをおすすめします。 | ソフトとハードの中間の硬さですので、平均体型の方や、どの硬さが良いかわからない方にもおすすめの硬さです。 | あまりやわらかいコイルだと体が沈み込んでしまい、体が疲れやすくなってしまいます。マットレスを長持ちさせるためにも、ハードタイプがおすすめです。 |
一般的なマットレスのサイズは、下記の表のようになっています。
サイズ | セミシングル | シングル | セミダブル | ダブル | クイーン | キング |
---|---|---|---|---|---|---|
参考図 | ||||||
設置に必要な お部屋サイズ(目安) | 4畳 | 4畳 | 6畳 | 8畳 | 8畳 | 10畳 |
幅と長さ | 幅約85cm x 長さ約195cm | 幅約100cm x 長さ約195cm | 幅約120cm x 長さ約195cm | 幅約140cm x 長さ約195cm | 幅約160cm x 長さ約195cm | 幅約180cm x 長さ約195cm |
利用可能人数(目安) | 小柄な方や子ども1名 | 大人1名 | 大人1人(ゆったり) | 大人2人 | 大人2名+子ども1名(ゆったり) | 大人2名+子ども2名(ゆったり) |
マットレスにおいて、ゆったりと休め、リラックスできる幅は、
「体の幅に対し、左右15cmずつ余裕がある幅」
が理想的であると言われています。
「使うのは私だけだし、シングルでいいかな」
と決めるのももちろん良いのですが、寝相や寝返りを考えて、少し余裕のあるサイズのものを選ぶことをおすすめします。
シングルサイズは横幅が約100cmほどなので、
「思いっきり手足を伸ばして寝たい!」
「寝相が悪くてベッドから落ちるのが心配…」
「寝返りが多い!」
という方は、1サイズ大きめのセミダブル(横幅120cm)を選べば、のびのびと寝やすくなり、ベッドから落ちる!という心配もなくなるはずです。
使用する人数ではなく、
- その人にあったゆとり
- 睡眠スタイル
を考慮してサイズ決めをするのが一番おすすめです。
幅も大事ですが、マットレスの長さもサイズの判断材料に加えておきましょう。
一般的なベッドの長さは、幅のサイズを問わず、195cm前後で統一されていることがほとんど。
ですが、最近では190cm以下のショートサイズや、200cm超えのロングサイズなど長さの展開も豊富です。
身長の高い方は、ロングサイズ(200cm?210cmほど)にすると足もマットレスからはみ出しにくく、おすすめです。
「2人で使うから、ダブルベッドにしよう!」と、ダブルベッドを選んでも、2人の体型や睡眠スタイルによっては、2人で寝る際にちょっと窮屈に感じられることがあります。
そのため、のびのびと眠りたい方でお部屋の広さに余裕がある方にはクイーンサイズやキングサイズをおすすめします。
また、2人で同じマットレスに寝ているとこんなことも起こりがちです。
- お互いの寝返り等で振動が大きくなり、睡眠途中で目が覚めてしまう
- 起床時間が違うと、起きた時の反動で寝ている相手を起こしてしまう
1日の3分の1以上を過ごすベッドなのに、お互いの何気ない行動で相手を起こしたり、起こされたり…が続くと、あまりいい気分はしませんね…。
目が覚めやすい方や振動が気になる方は、
- シングルサイズのマットレスを2つ並べて使用する
- ポケットコイルスプリングを使用したマットレスを検討する
- セパレートタイプ(分割できるマットレス)を使用する
という買い方・使い方もおすすめです。
マットレスはサイズを問わず、大型寝具に分類されます。
ご購入の前に、
- お部屋に他の家具が置けるか
- お部屋の家具が問題なく使えるか
(チェストの引き出しが引けるか、クローゼットが問題なく使えるか、など)- お部屋の導線の確保が可能か
(ドアからテーブルまで、ドアからベランダまで行けるか、など)
これらの項目の確認は必須です。
また、クイーンサイズ以上の大型マットレスは、ドアを通らないため、ドア以外からの搬入経路の確保も必要となってきます。
- エレベーターで運べるか
- 窓からの搬入は可能か
など、搬入可能な経路を頭に入れておきましょう。
マットレスの構造を知っても、どのようなマットレスが自分の睡眠スタイルに合うのか、好みの硬さがどれくらいなのかわからない!という方もいらっしゃるかと思います。
そんな方には、店頭で寝転んでみてお好みのマットレスを探してみることをおすすめします。実際に店頭で数台寝転んでみると、自分の好みのものがきっと見つかるはずです。
「理想のマットレスってなんだろう…」
「寝心地が良いってどうしたらわかるの?」
と気になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
一般的に、「自分に合うマットレス」は、
「仰向けに寝た時も、立っている時の姿と同じS字姿勢が保てる」マットレス
といわれています。
どのような体勢かというと、背中を頂点に、腰の凹み、お尻の一番高い位置を線で結んで、横から見た寝姿がS字になるような体勢です。
たとえば…
寝姿を横から見た場合、体が「く」の字になり、お尻や腰に大きな負担がかかることになってしまいます。ハンモックで寝ているのと同じような状態ですね。
肩や背中とお尻のみが表面に接するような寝姿になり、それ以外の頭や脚などのパーツが浮き、体を痛めてしまうことにもなりかねません。
S字姿勢になっているかどうかの判断目安は、仰向けに寝転がった時に、マットレスと腰の凹みの間に手のひらが1つ入るくらいのすき間ができるかどうかで判断可能です。
これは自分では分かりにくいので、家族の方等に手のひらを入れてもらい、横から見てもらうと良いでしょう。
店頭で寝心地をお試しになる際に、チェックしていただきたいポイントがいくつかあります。
ステップに分けてご紹介します。
両手で上からギュッとマットレスを押さえてみましょう。
マットレスによっては、スプリングコイルの形や感触が直に伝わるものや、スプリングがギシギシときしむ音が聞こえるものがありますが、これらは耐久性や寝心地にあまり期待できないものが多いので、避けた方が良いでしょう。
理想的なものは、手で押さえた時に深く沈み込むもの(手のひら2つ分くらいの沈み込みがベスト)。深く沈み込むものは、クッション層とスプリングコイル層がバランス良く配置されているものが多いんです。
少し勢いをつけてポンっと座ってみましょう。
反動で衝撃や振動がすぐに止まるものがベストです。
そうでないものは、寝返る際のマットレスの横揺れが止まりにくく、寝心地に影響しやすくなります。
ここでやっと寝転がるステップに入ります。
まずは、目を閉じて、仰向けに寝転がってみましょう。
寝転がった際、腰やお尻といった、体重がかかりやすいパートなど、どこか1か所に負荷がかかりすぎていませんか?
どこかに集中して負荷がかかるようだと、寝返りが打ちにくく、体を痛めやすくなってしまいます。
先ほどご紹介したように、どこかのパーツだけが深く沈みすぎておらず、自然な体勢(腰の凹みとマットレスの間に手のひらが入るほどの空間がある)で仰向けになれるマットレスが理想的です。
横向きに寝ることが多い方もいらっしゃいますが、左右どちらか横向きに寝て、
? 不自然に感じる体のパーツはないか
? 圧迫感を感じないか
を確かめてみましょう。
??のどちらか1つでも感じるようであれば、他のものを試してみましょう。
寝返りを打ってみることで、どれくらい内部の振動が伝わりやすいかを体感できます。振動が伝わりすぎる場合も体への負担が大きくなるため、眠りにくくなってしまいます。
寝転がって試す時間ですが、数分ゴロゴロするだけでは、実は不十分です。
できるだけ長く寝転んで、質感や、寝返りの打ちやすさ、圧迫感の有無があるか、などじっくり調べてみましょう!
くれぐれも、本当に眠ってしまわないようにご注意くださいね。
ベッドパッドは、マットレスの上に敷くシーツのようなものです。
ベッドパッドのタイプは主に2種類に分けられます。
私たちが睡眠中にかく汗を吸収してくれるアイテムで、マットレスへの汗染みやにおいなどをカットしてくれます。もちろん、丸洗いも可能ですので、特に夏場に積極的に活用したいアイテムですね。
汗取りパッドは薄手のものが多いのに対し、寝心地調整パッドは厚めのものが多いです。
買ったマットレスが思いのほか硬かった時や、スプリングが体に当たるのが感じられる時などにおすすめのアイテムです。
こちらは汗取りパッドとは異なり、洗濯機で丸洗いできないパッドなので、ご使用の際は汗取りパッドと一緒に使うことをおすすめします。
「え!あんな大きいものを干すの?」と、びっくりした方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらは日当たりの良いところに立てかけておくだけで十分干すことができます。
日光が直接当たりやすい場所がマットレス干しのベストスポットです。
干すことによって、マットレスのベンチレーターからは出せなかった湿気や、においも放出しやすくなります。
2~3ヶ月に1度を目安に干してみてください。
マットレスはずっと同じ面、同じ方向で使っていると、お尻や腰部分など、重みがかかりやすい場所がへたりやすくなるばかりでなく、コイルの消耗が早くなったり、中身に使われている素材も痛みやすくなってしまいます。
マットレスは、ご購入から2~3ヶ月を目安に、頭と足の部分を回転させて使いましょう。こうすることで、マットレスの老朽化に歯止めをかけることができます。
ご購入から6ヶ月目くらいに、マットレスの表と裏をひっくり返してみましょう。これで、普段接していた面を休ませることができますね。
それ以降は、3ヶ月スパンで頭と足の部分を回転させる、表裏をひっくり返す、を繰り返すとより長持ちしやすいでしょう。
ほとんどのマットレスは表も裏も、足部分も頭部分も対称に構成されているため、全ての面をローテーションしても寝心地には影響しないので、ぜひ実践してみてくださいね!